今回は新しい企画展のお知らせです。
第2展示室の展示ケースにて、2/5(火)より
企画展『 清盛への企て 』がはじまりました!
▼展示の様子
当館所蔵の絵金派による芝居絵屏風
《平家女護島 鬼界が島の俊寛(へいけにょごのしま きかいがしまのしゅんかん)》を展示しています。
平家女護島(人形浄瑠璃、後に歌舞伎化)は、
平家の栄華と没落を描いた日本屈指の軍記物『平家物語』に取材した作品で、
平清盛や牛若丸、俊寛の活躍を劇化したものです。
この作品でとくに有名で、よく上演されるのが
本作にも描かれた二段目の《鬼界が島の段》で、『俊寛』と通称されます。
ここで俊寛のご説明を。
◆ 俊寛(しゅんかん)って? ◆
『平家物語』に登場する法勝寺の執行(僧職の名称)俊寛僧都がモデル。
1177年に、平清盛により幽閉されている後白河法皇の近臣が集まって
平氏追討の謀議をしたことが清盛に伝わり、
俊寛は丹波少将成経(たんばのしょうしょうなりつね)と
平判官康頼入道(たいらのはんがんやすよりにゅうどう)とともに
九州薩摩の鬼界が島(現在の硫黄島といわれる)に流刑となりました。
俊寛らが話していた内容は、こちら。
「後白河法皇に猿楽を仕れといわれ、瓶子の首を取ってみせた」
瓶子とは主に酒器として用いられる壷の一種で、
ここでは平氏に瓶子をかけて会話を盛り上げた、という他愛もないものでした。
それでもしかし、捕縛されて流刑にされてしまった、という記載から
政権を握る者への冒涜は少しでも見逃せない、
という当時の世間を満たす固く厳しい風潮が感じられます。
また、この作品の右上には、
遠ざかっていく赦免船に向かって俊寛が大きく手を伸ばす様子が見て取れます。
この描写は歌舞伎の演出にも見られ、
この段の幕切れに大きな岩が現れ、岩の上に残された俊寛が
赦免船に向かって「おおい、おおい」と手を振る悲壮感漂う姿が印象に残ります。
その後、俊寛は松の枝に手をかけて伸び上がろうとするが、その枝が折れ
茫然としたまま幕を閉める、という初代中村吉右衛門の演出も有名です。
そもそもこの作品は 近松門左衛門 によるもので、
《鬼界が島の段》は『平家物語』の巻三『足摺(あしずり)』を劇化したもの。
原作では、ある出来事により鬼界が島の流人に赦文が下され、
ともに流刑になった少将成経と康頼法師は赦免船に乗って帰洛しますが
俊寛はひとり島に置き去りにされてしまいます。
このように『平家物語』に描かれている俊寛は 受難の人 という印象ですが
近松はここに独自の解釈を加えて再創造し、
未来ある若者たちのため、また妻への愛のため、
自ら島に残ることを決意する 英雄的な人間像 を作り上げました。
ここに挙げた脚本・演出などが功を奏し、
現在でも評判の高い、近松作の時代物を代表する名作となっているのです。
今回紹介した作品のほか、
源平の合戦で活躍した源氏方の武将・熊谷次郎直実との最期の戦いによって
現在まで語られる夭折の武士・平敦盛(たいらのあつもり)を描いた白描など
平安時代末期に政権を握った『平清盛』の一族・平家に関連する作品を紹介しています。
まだ少し寒い日は続くようですが、少しずつ暖かい日も増えてきますね。
お休みの日にはぜひ本企画展をご覧になりにお越しください。
会期は以下の通りです。
◆ 清盛への企て ◆
2019年3月31日(日)まで
開館時間 9時~17時 ※入館締切は16時30分となります。
たくさんのご来館、お待ちしております