今年の絵金祭りのメインとなる芝居絵屏風及び、
絵金歌舞伎の上演演目は、赤岡町本町ニ区所蔵の
伽羅先代萩 御殿(めいぼくせんだいはぎ ごてん)』です。

 奈河亀輔(ながわかめすけ)の作となる歌舞伎狂言
『伽羅先代萩』は、江戸時代の仙台伊達家に実際に起こった
お家騒動を題材に、時代を鎌倉時代に置き換えて描かれたものです。


【あらすじ】
 お家乗っ取りをたくらむ仁木弾正(にっきだんじょう)一味に
そそのかされ、放蕩三昧の末に隠居させられた大名足利頼兼の子、
幼君鶴喜代(つるきよ)は、仁木一味に命を狙われる身。

 忠義の乳母政岡(まさおか)は毒殺をおそれ、鶴喜代を
病と称し男性から遠ざけ、自ら食事を作り、息子の千松(せんまつ)
に鶴喜代の身辺を警護させます。食事は日に一度きり、幼い鶴千代
と千松は空腹に必死で耐える日々を過ごしています。

 ある日、管領山名宗全の奥方栄御前(さかえごぜん)が、仁木の
妹八汐(やしお)とともに見舞いに訪れます。将軍下賜と偽り、
毒入りの菓子を鶴千代に勧める栄御前もまた、仁木の一味。

 鶴喜代が菓子を口にしようとするその瞬間、千松が毒味
と叫び割り込んで菓子を食べ、毒殺発覚を防ごうとする
八汐の手により惨殺されます。


先代萩2.jpg
 
 
【見どころ】
 絵金の屏風絵『伽羅先代萩 御殿』は、鶴喜代が栄御前
の持参した菓子を今まさに食べようとしている場面です。

 この絵の見どころは、悲劇の前の一瞬、“今まさに”の
緊迫感を描いているところにあります。

 画面の遠近感を利用しながら、政岡、栄御前(侍従二人)、
八汐、千松の目線が全て菓子を口に運ぶ鶴千代に向けられており、
絵を見る私達の視線も同じように鶴喜代に向くよう構成されています。

 必死の形相で鶴喜代の手を押さえる政岡、毒殺の瞬間を見届けよう
と目を見開きつつ思わず扇子を手から落とす栄御前、不気味に微笑む
八汐の着物は髑髏柄、衝立の蔭から飛び出す構えの千松、鶴喜代を取
り巻く人物それぞれの心中も、表情や動作、小道具などから読み取れ
るよう描かれています。


7月17()・18(の絵金祭りで、
蝋燭の灯りに映える実物の『伽羅先代萩 御殿』の迫力を
ぜひご鑑賞ください。